高齢者の骨折・転倒について

はじめに

現在、日本では年々高齢者が増え続け、超高齢化社会を迎えています。2025年には高齢者人口は3000万人を超え、総人口の4人に1人が高齢者となります。その中で高齢者にとって「転倒・骨折」はつきまとう問題の一つです。2007年国民生活基礎調査では、高齢者が要介護になる原因として、「骨折・転倒」が全体の9.4%を占めており第5位となっています。

高齢者の骨折は、骨粗鬆症に基づく骨の脆弱化が基礎にあって、わずかな外力によって骨折を生じることが多くなっています。骨折をすると、しばしば安静を長くとり、関節可動域制限や筋力低下などの廃用や活動意欲も低下し、いわゆる寝たきり老人になってしまう可能性があります。みなさんの祖父や祖母が転倒して骨折し、また、それをきっかけに要介護状態になった方も多いのではないでしょうか?

転倒とは?

転倒とは「自分の意思からではなく、地面またはより低い場所に、足以外のからだの一部が接触すること。(階段、台、自転車からの転落も転倒に含まれる)」と定義されています。

骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症は、骨の量が減少したり、骨の質が劣化したりして骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。骨の内部には軽石のように骨梁という縦横にたくさんの棒状の骨が張り巡り連結して強度を保っています。健康な骨はこの棒状の骨が太くより密になっています。骨粗鬆症になると、骨梁が細くなったり、密度が低下しスカスカな状態になり、折れやすくなります。

高齢者の多い4大骨折

高齢者には多くみられる特徴的な骨折があります。

1:大腿骨頸部骨折:足の付け根(太ももの骨)
転倒による衝撃で骨折しやすい。2007年国民生活基礎調査ではおよそ年間に約15万人の受傷者が発生していると推計されています。

2:橈骨遠位端骨折:手の骨折(前腕の骨)
転倒の際に手をつくことによって骨折しやすい。

3:上腕骨近端骨折:肩の骨折(上腕の骨)
転倒によって肩を直接打つか手や肘をつくことによって骨折しやすい。

4:脊椎圧迫骨折:背骨の骨折(胸椎・腰椎)
転倒によって尻もちをついてしまった時に骨折しやすい。

転倒の要因について

転倒の要因には内的要因と外的要因の大きく二つに分けられます。

転倒の内的要因

①感覚系の加齢変化…足底などの感覚が悪くなり転倒しやすくなります。
②視覚の加齢変化…視力低下や視野が狭くなることで小さな段差など気づきにくくなります。
③神経系の加齢変化…脳が萎縮による記憶や学習能力低下、反応時間の遅延などがみられます。
④骨格系の加齢変化…力が弱くなることでふらつきやつまずきやすくなります。
⑤バランス機能の加齢変化…前述した要因が絡み合い、内・外乱の反応に弱くなります。
⑥高次神経系の加齢変化…認識・学習・記憶・企画・創造・判断・言語などヒトの精神活動に関する脳の働きが低下します。
⑦薬物の影響…高齢者は薬物反応に敏感で、それに伴う副作用発現率も高くなります。
⑧睡眠パターン…睡眠-覚醒リズムの変化が認められ、日中覚醒レベルの低下などがみられます。
⑨精神・心理面…焦りや不安なども関与します。

転倒の外的要因

・履物…脱げやすいもの、底が滑りやすいもの。
・床の状態…小さな凸凹段差、滑りやすさ。
・明るさ…夜間などの足元の暗さ。
・床の障害物…電気コード、カーペットなどの折れ端。

外的要因が転倒原因になるわけではなく、内的要因である身体機能変化が環境に適応できないか、あるいは身体機能変化と環境との相互関係を認知できないために転倒を起こすと考えられています。また、内的・外的転倒リスクが重なると、さらに転倒の危険性は増加します。

転倒予防について

転倒を防ぐためには上記した要因一つ一つの問題解決していく必要がありますが、高齢になると上記した内的な要因が絡み合ってくることが多く、誰かと話しながら歩行するというように「○○しながら○○する」という二重課題(二つのことを同時に行う)能力の低下がよく観察されます。そのため、今回は転倒予防運動の一つとして、脳と身体を同時に刺激する二重課題トレーニングを紹介します。

①ステッピングエクササイズ
一つのジャンル(野菜の名前や魚の名前など)を出来るだけ多くを言いながら、踏み台昇降(足踏み)を行う。

②トレイルウォーキングエクササイズ
1〜15まで5m四方の領域に旗を設置し、1から順に歩いて通過していく。

「運動疫学研究 2012; 14(2): 125-134.  高齢者のテーラーメード型転倒予防 山田 実(理学療法士)」より

上記の運動は一例ですが、転びにくく、転倒しても骨折しにくい身体を作っていくためには日頃から運動を行い、栄養をしっかり摂っていくことが大切です。

おわりに

今回、「高齢者の転倒・骨折」について紹介させていただきました。転倒による要因は様々であり、複数の要因が関与することがあります。何が原因であるかは僕たち理学療法士が評価し適切なアドバイスをすることができます。最近、歩くのが億劫になってきている方や転びそうになったことがある、また、そういう方が身近にいましたらお近くの病院にいる理学療法士へ相談してみてください。