日本における認知症のケアと再考

「認知症」この言葉を知らない人は少なくなっているに違いない。TVの特集やドキュメンタリーで見かける事も多々ありますし、私も「私の頭の中の消しゴム」という映画を観て号泣したのを覚えているくらいです。

私の所属する病院でも、主病名とは別に「認知症」の病態をもつ患者が数多くみられます。程度にもよるが、意思疎通がとれなかったり、理解が得られなかったりといった症状が見られ、治療の場面でも患者本人に「気づき」を与える場面でも難しさを経験したセラピストは多いのではないでしょうか?

認知症とは脳の病気が原因で記憶力や判断力が低下、日常生活になんらかの支障が出ている状態であり、正常に発達した知能が後天的な障害によって正常レベル以下に低下した状態を指します。原因として、数多くある中でも代表的な疾患が”アルツハイマー病”です。認知症の原因としてもっとも多く、70%以内が該当すると言われています。

「100人に1人が認知症を発症する」

世界保健機関(WHO)が発表した報告では、

「世界の認知症有病数は現在、およそ3560万人に上る。2030年までに2倍の6570万人、2050年までに3倍の1億1540万人に増加すると予測されている。認知症は世界中で増加しているが、半数以上(58%)は低・中所得国に集中しており、この割合は2050年までに70%以上に上昇する」

とあり、認知症は毎年770万人ずつ増加していて、世界の認知症の治療や社会的損失のコストの総計は、1年で50兆円以上に上ると言われています。

しかし、こんな増加傾向であるにも関わらず、認知症対策を適切に対処するプログラムを設けている国は世界にわずか8ヶ国(カナダ・フランス・ドイツ・イタリア・ロシア・アメリカ・イギリス・日本)しかないというのが現状です。現段階では、先進国でも認知症の対策は遅れ、診断が適切に行われていない傾向であり、高所得国でさえ5分の1と認知症が適時診断されているのは半数に過ぎません。代表的なアルツハイマー病の治療は早期発見・早期治療から開始したほうがより効果的で良い状態を長く保つ事が分かっているので、原因によっては治療法と介護の介入方法が異なるため、早期の原因特定が重要となってきます。

日本での認知症に対する取り組み

では、日本ではどうでしょうか?厚生労働省の調査によると、65歳以上で認知症とされる人は2012年時点で約462万人に達し、予備軍(軽度認知症)も約400万人と推計されます。2025年には700万人を超えるとの報告もあり、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が羅患する計算となっているのです。これからさらに高齢化が進む日本には重要な課題の一つである事は間違いなく、現在では認知症への取り組みが日本のみならず、世界で早急に行われている段階にあります。

認知症は、日常生活に支障を来たすさまざまな症状が現れてきます。その症状に対する治療として、主に薬物療法とケアやリハビリがあり、認知症の患者さんには現在、「キュア(治療)よりもケア(介護)」と言われていますが、薬物療法もケア・リハビリもどちらも大切であると私は考えます。その根底には、日々、進歩する薬物療法も、ケア・リハビリも、「人が人を想う気持ち」から成り立っているからです。

私たちセラピスト1人1人が「人を想う気持ち」で、患者さんの身になって接することが何よりも大切と考えます。それで、「キュア(治療)よりもケア(介護)」から「キュア(治療)とケア(介護)・リハビリ(治療)」への再考。

みなさん、考えてみてください。

「大切な人と大切な事を」